何はともあれ、食べる前に何にでも醬油をかける父は、母によくしかられていた。
ちょいとかけると呑める、のはわかる。
ノスタルジックでアットホームなのだ。
ロンドンに住んでいた頃、日本が恋しくなると醬油を使ってツマミを作った。
キンピラは、ごぼうが手に入らなかったので、 パースニップParsnip という根菜で代用。赤ワインかサイダーを合わせた。
サイダーCiderはシードル同様りんごのお酒だが 立ち位置はホッピーのように小粋なオヤジ酒。
英国小学生サイズの私がパブでぐびぐびサイダーを呑んでいると、 「ユーYou クールcool!」ってよく言われた。
フラットメイトでトゥリニダット・ドバコ出身のドリーDollyも 醬油は大好きだった。「SOYソース〜 ン〜 ヘルシー ラブリー♡」と言って、 炒め物にじゃばじゃば振りかけた。
そこにマンゴーチャツネを付け合わせ、 ポプドムという甘くないうす平たい煎餅と頂くスタイルはドバコ流なのだろう。 赤ワインかグラッパだった。
グラッパなのは、彼氏のアレックスAlexがイタリア人だったからだと思う。
ロンドンに住む各国の人々、甘い辛い醬油味が好きなのだろうなぁ。
中華街にあったジャパニーズレストランで「TERI-TERI」という、 たぶん鶏の照焼きをイメージした丼を食べたことがあったが、非常に驚いた。
わらじ大のチキンに目から星が飛び出るくらい甘い、 しょっぱい醬油味のタレがどっぷりとかけられた汁だくライスにノックアウト。 久々の日本酒が薄く感じた。
その当時、SOYソースは一種類、〝醬油〟だと思っていたけど 白・淡口・甘口・濃口・再仕込・溜 醬油があることを知るようになる。
鯛刺には淡口で、鰤刺は溜にしてみようか…なんてやっていると 大人になれてよかったと思う。
醬油ですすむ、という酒び。